今日はナチュラルガーデンの整理の続き。
イコロの森のナチュラルガーデンは、コニファーガーデンの横にある池から流れる小川(人工)にそって、縦長に広がっています。細かく分けると、小川上流エリア、下流エリア、小川の奥の日陰(林床)エリアと小川の手前の日当たりの良いエリア、があります。
イコロの森の中にある、他の花壇と違い、開園以来大きくデザインを変更したり、植替えをしたりすることなく管理を続けているエリアです。自然風の庭やその植栽・管理方法は背景やデザインなどにより異なりますが、ここの場合はあえて言えば、テーマは「北海道の自生種を中心とした植物とそれを引き立てる植物の組み合わせで出来るシーン」で、管理はあくまでイコロ流のローメンテナンス。自然風の庭は見た目から想像するよりも手をかけないと意図通り維持できないことも多いですが、イコロの場合は「私たちが現実的に可能な範囲」での管理となっています。植物は自由に増えたり減ったりしてしまいますが、それをかなり許容し、風景を損なう可能性のある植物を適宜駆除するという方法で行っています。作業にかける人工は少なくても、作業する人の植物の知識や判断などは他のエリアよりも少し高く求められます。私たちとしても、自分たちの意図が少しでも上手に伝わるようにお願いする必要があるエリアです。
春は、ナニワズやカタクリ、シラネアオイ、ミズバショウなどがみられ、それからギョウジャニンニクやヤマシャクヤク、タチギボウシなどが続きます。秋の七草も見られるなど、春から秋までその移り変わりを楽しむことが出来ます。最近は、サンカヨウの問い合わせも多いですね。
サンカヨウ(Diphylleia grayi)
水にぬれると透明になる花弁が話題です。開花は5月の上旬ごろです。
さて、今日はそんなナチュラルガーデンの掃除です。上記のような管理を行っているので、その分スギナやササなど、あまり増えてほしくない植物が増えていくのも事実です。今日は先日刈り込んだものの集草と、増えてほしくない植物の整理を中心に行いました。図面上で、植栽図を書きながら考えるのも植栽デザインですが、このように現地で今の状況や将来を想像しながら管理を進めていくのもデザインであると思います。意識なくそれを実践しているガーデナーの方が多いと思いますが、実際こっちの方が楽しいと感じることもおおいですね。「偶然増えてきたこれをもっと魅力的に見せたいから、こうしよう。」で、実際にすぐに実行していくのは充実感があります。シーズン中はどうしても効率を優先しないといけないので、そのような進め方は困難。もう雪が降って強制終了されてもいいかな、という程度の冬仕度をおおまかに済ませたけど、まだ外作業が出来る今は、そんな作業ができる我々にとってちょっとラッキーな時間です。存分に楽しませていただいてます。
これは今年の春の写真ですが、確実にこれよりもよいシーンになるはずですよ。楽しみ!
今日は耐寒性の低い植物にウッドチップのマルチング。
マルチングとは「覆う」ことをいい、畑とかだとプラスチック製のシートのようなもので畝を覆っているのを良く見ますね。園芸では、花壇全体を覆うことが多く、その材料は目的により様々ですが、ウッドチップや腐葉土、バークたい肥など、景観を損なわない色合いで、土壌改良としても利用できるものを良く使います。
今日行ったマルチングは、少し寒さに弱いかな、と思われる種類に対して、株の周囲をいわば布団のようにかぶせて、地中(根がある所)の温度を少しでも保温したい、という目的です。使用資材はウッドチップで、写真のように目的のエリアだけ、スポット的に行うパターンでした。
こんな感じになっております。すでに、花壇の土はカチカチに凍っていますので、本来ならもう少し早く行いたいですが、なんとかまだ良いでしょう。もっとも、積雪が早く、根雪になってしまえば、地中の温度は下がりにくくなるので、このような目的でのマルチング自体が必要ない場合も考えられます。植物の耐寒性区分で寒さにどれだけ耐えられるかを大まかに知ることはできますが、これは積雪の影響を考慮した指標ではありませんので、積雪の多い地域では、宿根草のような、「地上部は休眠して地中の根だけで越冬する」種類は耐寒性区分の指標よりも実質的には有利だと考えることもできます。苫小牧は上の写真をご覧の通り、根雪はまだ先で、でも気温はぐんぐん下がっているので、雪の代わりに早めにこういったマルチングをしてあげるのが効果的です。イコロの森では、アガパンサス(Agapanthus)やヘスペランタ(Hesperantha)に行っています。また、花木ではフクシア マゲラニカ(Fuchsia magellanica)にも行います。どれも、行うことで、株が大きくなり、花芽も増えると実感しています。
春になったら、ここでつかったウッドチップは周囲に薄く敷き広げるとよいですね。
ちなみに昨日行った腐葉土のマルチングは春に咲くスノードロップの球根があるエリアで、土壌改良にもっとも期待していますが、景観の向上、そして園路と植栽域をはっきりさせたいという気持ちもあります。みなさん、ちいさなスノードロップ近くで見たさに、ついつい踏み込んでしまう様ですので。(コチラご参照ください。)ここの場合は、このエリアで集めた落ち葉を戻す、というところに大きな意義を感じます。
また、グレイトパーク修業時代には、同じくパーク内の作業で出た落ち葉や剪定枝でつくられたコンポストを、コニファーや、ツツジ属の花壇に敷きまくりました。この時期ですね。
マルチングの保温効果は寒いときだけでなく、夏場にも有効です。直射日光がガンガン当たって、地中の温度が高くなるのを嫌う植物には、是非ご利用ください。乾燥防止にも良いですね。
作業は「葉や茎が繁茂していない秋の刈り込み後から春の間」に、「積雪を避けて」なので北海道ではチャンスは短いです。やるなら今しかねぇ~、です。
まだ積雪のないイコロの森では、引き続き冬仕度が続いています。
今日は宿根草の刈り取りと集草。
刈り取りは、イコロの森では基本的に二人で行います。片方が刈り取る草をつかんで引っ張り、もう片方が刈り込みばさみでザクザク切ります。
根が一か所で茎がバサッと出ている株はつかみやすく、刈りやすいです。一方、「根がマットのように広がっていて、いろんなところから茎が出ている」ものは、なかなか往生します。この時期になると、当然茎が倒れているものもあり、凍って地面にへばりついているものもあり、それらを丁寧に手でかき集めて、切る人が鋏を入れやすいように持ち上げる、という具合です。
つかむ係りの人は切りとった草を抱えながら進み、手で抱えきれなくなると、上の写真のように一か所に固めておいておき、後ほど作業車にて回収することになります。小さな花壇であれば、一人で剪定ばさみで丁寧に、が良いかもしれませんが、広い場合や作業時間が限られる場合は、この方法がやはり早いです。つかむ係りの人は、指を一緒に切られないように切る場所を示すように持ち上げ、切る係りの人は焦らず鋏を入れることが大切です。Health & Safety(健康と安全)ですよ。
どちらにしてもなかなか持久力のいる作業になります。一人だったら「ちょっと休憩。。。」と思う瞬間でも、バディがいると「ここで休んでよいのだろうか」というのもありますが、一人よりもついつい頑張ってしまうものです。昨日のオレガノの花壇のところはマラソンのようでした。。。
さて、ちなみに「根がマットのように広がっていて、いろんなところから茎が出ている」パターンの場合は、刈払機の利用も選択肢の一つです。イコロの場合は、ナチュラルガーデンでその方法をとっています。種類やデザインにより、ここではそれで問題なく、よりスピーディに仕事は終わります。この場合は、刈り取った草をレーキで回収する手間は余分にかかりますが、全体としては早く終わります。
刈り込みを行わないと、来年、新しい芽が出たときに茶色い枯れた茎葉と混ざってしまい、きれいでありません。また、枯れた茎葉をそのまま残せば、病気や害虫のすみかとなりやすくなるのも問題でしょう。そのような理由を含め、北海道の場合は特に、雪で倒れたり、凍ったり、解けたり、いろいろ厄介なので、積雪前に行うのが賢明だと思います。
また、オーナメンタルグラスは雪原に穂がすっくと立つ姿が美しく、観賞価値が高いのでそれを見込める場合は刈り取らずにおき、春に行う手もあります。イコロの森では、きれいに立っているグラス、積雪後にも観賞しやすい場所(休園中なので、我々のみの楽しみではありますが)のグラスは切りとらずに置きます。お客様のところでは、作業に伺うスケジュールの都合や、穂が冬の間に散らかって掃除が大変、などの理由もあり、秋に刈り取ってしまうことも多いです。約半年もの積雪シーズンですので、都合の良い方法で行うとよいかなと思いますよ。
11月に入ってからは、恒例の冬仕度巡業が続いていますが、ここ数日はイコロで作業をしています。
今やっているのは、「ナーサリーの苗を温室へ移動」です。温室と言っても、今はまだ加温などはせず、「外よりも気温が下がりにくい」程度です。小さなポットに入っている苗は、それだけでも随分ちがうものですね。今朝は随分気温も下がり、まだ温室へ移動できていない苗はカチカチに凍っておりました。
しかし、おかげでガーデンの植物にはうすく霜がついて、久しぶりにガーデン散策を楽しみました。
先月をもちまして、2017年の夏季営業も終了となりました。毎年同じ感想ですが、あっという間でした。そして、足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました。また来シーズンもお会いできると嬉しいです!
ということで、今日は今シーズン印象に残った出来事を僕の独断によるランキング方式で振り返らせていただきます。画期的ですね。
第五位「オンラインストア始まる」
「ナーサリー(植物)https://ikornomori.thebase.in/」「イコロハウス(雑貨・食品)https://ikorhouse.shopselect.net/」と2店舗をオンライン上にオープンいたしました。いつものPOP作成作業にくわえて、新たに植物のデータを入力しないといけないという試練ではありました。サチさん、ご苦労様でした。ぼくも微力ながら、写真探し、頑張りました。北海道の方にも多くご利用いただけ、ますますがんばらんといかんな、と思う次第です。今後の課題としては、新商品をいかにマメにアップできるか、また画像データがないものに関しては貪欲に撮影に挑みたいと思っております。来年もよろしくお願いします!
第4位「ポールファーナン、ブレイク。」
ホワイトガーデンの中央にあるパーゴラに仕立てられたバラ ‘ポールファーナン’(Rosa ‘Polstjärnan’)がいよいよ成熟期を迎え、満開時には多くの方に喜んでいただけました。今シーズンは、長尺苗の販売もあり、ホワイトガーデンでご質問いただいて、そのままナーサリーにご案内する、ということもありました。店頭の苗は完売したのでは?ようやくパーゴラが華やかになり、イコロの森のシンボル的な存在になってきましたね。これはブレイクですよ。見ごろは6月下旬から7月初旬。ぜひ来年もお見逃しなく。
第3位「hanakoに載る」
Magazine for TOKYO GIRLS「hanako」にイコロの森のレストランガーデンがでっかく載りました。しかも、インスタ映えで話題の「ロールアイスクリームファクトリー」の次のページ。すごいっすね。北海道のおいしいものを特集したページで、「LOPPIS2017」を取材していただいたんです!これはまさに、イコロの森を応援してくださる皆さまのおかげであります。ご来園頂いた皆さま、ご出店いただいた皆さま、そして実行委員会の方々に感謝いたします。今回は「食」の特集ではありましたが、いつかまた、庭や植物の話題でこうやって多くの人に紹介してもらえるような機会に恵まれるよう、精進いたします。
第二位「ササ咲く」
突如やってきた笹ブームでした。(イコロで開花したのはスズタケという種類です。)数十年に一度しか咲かないと言われ、その生態にはまだなぞも多いということで、皆さんの興味を掻き立てたササ。開花も終盤に差し掛かってから、新聞やテレビに取材をしていただき、多くの方がイコロにお越しくださいました。これのおかげで初めてイコロに来てくださった方も多く、「いいとこだね!」と言っていただきました。ササの開花は不吉の前兆などともいわれますが、我々にとってはイコロの森を知っていただけた、神様からの突然のプレゼントのようなものでしたね。観光型ガーデンとしては、華やかな園芸種で喜んでいただくのも大切ですが、ウッドランドガーデンのように自生の植物があるエリアでは、それらをしっかりと守り、皆さんに見ていただくのも我々の大切な役目だなと思いました。ササは一斉開花すると翌年は枯れてなくなるとも言われますが、さて、来年は本当に枯死しているのか、しっかり見守りたいと思います。
第一位「10years!!」
2008年4月にオープンしたイコロの森は、今年は実は10年目のシーズンでありました。僕は2010年から働かせていただいてますので、10年まるまるではないですが、でも、ここまで続けることが出来て本当に良かったです。Windsor Great Parkで一年間の研修をしていた時、いつか大きな庭を自分の好きなように育てることが出来たら楽しいだろうな、と夢のようなことを思いました。とんでもない大金持ちになるか、よっぽどの努力か運か、がなければなと思っていて、常にそこを目指してがむしゃらにしていたわけではないけれど、色んな変化や出会い、経験を経て、いつの間にかすごく近いところにきているな、と思うようになりました。感謝しかありません。また10年後もいつの間にかいい感じ、って思えるよう、とりあえず11年目を頑張ります。
来年もよろしくお願いいたします!